2023年3月10日アメリカで資産規模Top16に入るシリコンバレーバンクが破綻しました。
過去にリーマンショックも経験した世代が多いので金融機関の破綻には敏感な人も多いと思います。このショックが発端となり、この2~3日間で大きく今後の経済情勢が変わってきています。
今回はシリコンバレーバンク(SVB)の破綻までのいきさつから今欧州にまで広がっているクレディスイスの問題、そして今後の世界の利上げ予想をプロの意見をまとめ、テクニカルで見た時の過去のリーマンショックとの類似部分を指摘していきます。
目次
シリコンバレーバンク(SVB)の破綻
この数日(2023年3月16日時点)で実はアメリカでは以下3つの金融機関が破綻、事業閉鎖しています。
3/9 シルバーゲート銀行
3/10 シリコンバレー銀行(SVB)
3/12 シグネチャー銀行
世間で大きく取り上げられだしたのはSVBの破綻からです。シルバーゲート銀行はどちらかというと仮想通貨を扱う最大手の銀行だったこともあり、どちらかというと仮想通貨関連ニュースとみられたかもしれません。
今回のSVBの破綻は2008年9月ちょうどリーマンショック近辺で破産したワシントンミューチュアルに次ぐ2番目の大きさといわれたのもあってだいぶニュースになりました。
集まりすぎたマネー
事の始まりは2020年のコロナショックまで遡ります。当時はコロナショックでバリバリの金融緩和状態。各所お金あまりがすごく私の周りでも投資家がベンチャーなんかに投資したいって人が増えてました。実際に補助金や10万円なんかをもらって投資をしていた人たちによって株はすぐに回復しましたね。
SVBはベンチャー企業などの新興企業の銀行口座を作りやすい銀行として有名でした。とりあえずSVBで口座を開けられ、日本でいうところの住信〇〇だったり、GMO〇〇銀行だったりみたいな感じです。
多くのベンチャーはVC(ベンチャーキャピタル)などの投資家からお金を大量に投資してもらい、そのお金をこの銀行に預けていたわけです。
下の日経新聞抜粋の図をみても2020年のアメリカベンチャーの資金調達額に比例してSVBの預金も増えていることがわかります。その結果SVBは預金残高を1年で倍以上に増やし約2兆9800億円の資金が2021年末で預けられていました。
預金の運用、そして失敗
多くの預金を放っておいてももったいないのでSVBはこれらを投資に回すことにします。まぁどこの金融機関でもやっていることなのでこれはそんなにおかしいことではありません。米国債や住宅ローン担保証券(MBS)などを買い占めこれらの残高はみるみる膨らんでいきます。預金に対する有価証券の割合もピークでは70%弱(通常の銀行は20~30%)と運用の極端な偏りが見えていました。
債券は金利上昇に弱い商品です。詳しくは以前のブログを見てもらったらわかると思いますが簡単に言うと金利が上昇すると債券の価格は落ちます。特に長期債券ほど多く落ちます。2022年から急ピッチの利上げが始まるとこれら債券は含み損を抱えるわけです。
さらにここ最近利上げで各ベンチャーも少なからずダメージをじわじわ受けていました。みんなが徐々に預金を引き出し始めたわけです。そうするとキャッシュが足りなくなります。
3/8に財務体質を強化する計画を発表しました。210億㌦の運用していた証券を売却して結果20億ドルの損失を確定させました。
同時に22億ドルの増資も計画しておりました。
3/9逆にこういったニュースがさらに不安を募らせ、何社かのVCは各社に資金を引き揚げるようにアナウンス。株価は6割安となり、投資家と預金者はSVBから合計420億ドルを引き出すのに殺到する事態になりました。
こういった反応も無理はなく、一般的に銀行が潰れた時は預金を保険機関が保証してくれるのですが、アメリカではそれが25万ドルでした。そしてSVBは全体の9割がこの25万ドルを上回る大口口座だったのです。
自分の資産がなくなるかもしれないって考えたら皆さんもお金引き出しますよね。
ということで3/10にお金が足りなくなったSVBはFDIC(米連保預金保険公社)の管理下に入り、破綻が報じられました。
国の迅速な判断
9割が保証されない!ということでほとんどの企業や投資家に多大なる影響を与えるところでしたがここはアメリカ、対処がものすごく速かったです。土日の間に政府は動き一連の事件で被害に遭った口座を全額保証すると発表したのです。
本来こんなニュースがでたら「うちの銀行もやばいんじゃないか」ってあちこちで銀行からお金を引き出すことにつながります。それに対して早めに大丈夫ですよと対処したわけです。
SVBの破綻により大きく売られていた銀行関係の株も主要指数もいったんは戻しました。
なぜ見抜けなかった?今回の破綻
一般的に格付け会社というのがあり、世界中の各銀行や企業の安全性を決める評価する会社があります。
このSVBですが潰れる直前の評価はBBBと投資適格級といわれるいわゆる「ちゃんとした銀行です」と評価された銀行だったわけです。
さらにSVBは大手会計事務所KPMGが監査で「この銀行大丈夫です」とチェックが終わった14日後に経営破綻しました。そしてなんとこの後破綻したシグネチャー銀行も11日前にチェックをしてOK印をもらったばっかりだったのです。
アメリカでは資産規模が2500億㌦未満の銀行は自己資本や手元流動性に関する基準が緩かったこともあります。
銀行が満期まで保有する債券に関しては時価基準の損失を無視できる仕組みでもありました。
債券は満期までもつということであれば実質的に損失は確定しないため安全資産とされています。
米国債なので米国が潰れない限り返ってきますからね。
今回の問題は投資にお金を回しすぎたという点とそれを良しとした根本的なルールだと考えられます。
FRB利上げに対する影響
今回の一件でFRBの金利上昇が世界に少なからずダメージを与えているというニュースになりました。
さらに忘れ去られがちですがこのバタバタで雇用統計、CPIと重要な指標が発表されインフレが落ちついてきていることも見られました。
投資家の中では金利を上昇するペースを弱める、または止める方向に向かうんじゃないかという考えが増えてきています。
FEDウォッチでみても次の利上げ幅が割れていますね。
今はマーケット触るのはおすすめしませんが、もし利下げとかになればマーケットが落ち続ける中、長期投資のナンピン買いをしていくのもいいと思います。
おまけ(ベアスターンズと重なる偶然)
こちら2007年から2010年のチャートです。
ベアスターンズがJPモルガンに買収されるというニュースが出たのが2008年3月16日。実はこのニュースから一気にリーマンショックに向かったわけではありません。
世界にこの悪循環が広がることはないと各種金融のプロが言って、一旦株価は大きく戻します。
今の流れと似ていますよね。
その後また下落、そして下落、2008年9月15日つまりベアスターンズのニュースから6か月後にリーマンブラザーズが破綻します。そのあと2009年3月まで底に向かって落ちました。
1250ポイントから最終700ポイントくらいまで落ちているので40%くらい下落しているわけです。
もちろん今回の金融破綻がこの時と同じ理由で破綻していない以上(投資しすぎの資金難という意味では同じですが)これはあくまで過去のチャートと重ねただけの図です。
YOUTUBE解説あります!
最近Youtubeを始めたのでこちらも紹介。今回はSVBについて上記を基に解説してます。
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